事例:GMP設備診断 その2

既存工場/製造支援設備の GMP改善

築20年を経過した既存工場はGMP機能の陳腐化が散見され、県からもPIC/S対応が求められていた。お客様で行ったGAP分析結果の内、ハード面のGMP診断を専門エンジニアリング会社へ依頼し、「抜本的なPIC/S-GMP対応」及び「省エネルギー」を考慮した計画立案をしていきたいとのご要望でした。そこで、既存設備の課題抽出と“あるべき姿”へのロードマップ作成について、HESGMP設備診断のご相談を頂いた。

GMP設備診断を実施したことで、既設工場の製造支援設備に係わる課題と対処方法を、概算コスト、工期とともに把握することができ、お客様(ご担当者様)が、適切で段階的な設備投資計画を立案できた。その後、社内承認された計画に基づき、施設の改修工事を行い、適正な医薬品製造施設と変身し、改造に伴うトラブルもなく安定的な稼働を行っている。

 

課題と対策

お客様からの提示頂いた課題と、担当者へのヒアリング、現場の確認、図面・文書の確認から、確認できたテーマ毎のHESの見解やご提案内容の一部を以下に記述する。

清浄廊下化の要否

清浄エリアの共通廊下が各製造室に対して陰圧の設計であり、多品種の製品を同時生産するには、廊下を最陽圧として清浄廊下化することが適切である。改修前の時点では、各作業室が廊下よりも陽圧となっており、作業室の余剰空気を壁に設置された差圧ダンパーから廊下へ流出させるシステムとなっていた。

空調空気のレターン風量の調整と、差圧ダンパーの向きを反転することで対応可能と考えた。着工前に各系統のダンパーやシャッター開度、空調機等の状態を詳細に調査した上で、具体的な対応方法の検討を行った。

中間品保管室の要否

共通廊下を主に原材料及び中間製品の置場としている。多品目製品の製造施設のため、生産品目の変更、ロットサイズ変更等により、廊下に保管している中間品の位置や区画面積が変更される可能性は高く、明確な区分化は必須であった。異種混同や交叉汚染防止措置、手順書の管理、教育訓練の継続的な実施等、ソフト面での対応では限界があるため、専用の中間品保管室を設けることを計画した。

ただし、当時の建屋内レイアウトのままでは、中間品保管室を設ける場所がないため、改造案として提示して頂いた工場隣接の空きスペースを利用し建屋増築し、中間品保管室を新規構築する案を推奨した。

空調の間欠運転の可否

清浄度等の環境条件の測定により、非稼働時に空調を停止していても、再稼働後一定時間内に製造環境が復帰可能であることがバリデートされ、原料および中間品の保管環境が適切に保たれていれば、必ずしも施設全体の空調を24時間運転する必要はない。

ただし、多品目を取り扱う製造施設であることから、交叉汚染防止のため、廊下最陽圧化を行った上で、廊下および原料・中間品の保管場所の空調は24時間運転する必要がある。

空調の省エネルギー運転の可否

  • 常時作業をしている秤量室と該当品目生産時のみ稼働する造粒室が、同一の空調系統となっている。空調エネルギー抑制のため、秤量室と造粒室の空調系統を分離する方が良い。

    竣工図の設計風量では工程室の換気回数が15/h以上(一部20/h以上)に設定されており、工程室換気回数の規定(社内設計基準等)が特に無かったため、室内の発熱量も考慮しながら10~20/h程度に抑えることを検討した。その結果、秤量室を工程廊下と同系統とし24時間運転、造粒室は製造スケジュールに合わせて単独発停とすることを提案した。
  • 包装室の天井高4mあり、必要以上の空調エネルギーを消費している。天井高を2.7mに変更し、同時に換気回数も見直すことで、空調風量を減少させることができる。

環境モニタリング設備設置の要否

各作業室に温度センサー、湿度センサーが設けられ、それぞれ計測値の上下限警を発報できるようになっている。共通廊下には、作業各室と廊下の差圧を計測する差圧計が設置されている。これらのセンサーが正常に動作し、かつ手順書に基づいて表示値の確認と記録を日常的に実施していれば、連続モニタリング設備を新規に設置する必要はない。

しかし、建設当時の警報確認記録から計測値が正しいことをバリデートできているか確認することができなかった。定期校正を行っていない場合は、適切な方法と頻度を設定した上で、校正対象計器の校正を実施し、校正日、有効期限、計器管理番号の表示をする必要がある。

製薬用水配管の完全ループ化

精製水供給メインループからT字状分岐にてユースポイントへ配管が取出されているが、分岐点からユースポイントバルブまでの経路に水が滞留し、菌が増殖する恐れがある。主管をU字状にユースポイントまで立下げ、デッドレグを6D以内に収めることが必要である。

ただし、既存の配管を切断してU字立下げ配管を施工するには、長期間の製造停止を伴うため、現実的ではない。また、既存配管を流用するには、使用材料の証明書や施工記録等が必要だが、建設当初のIQ図書が残っておらず、GMP適合を証明できない。

このため、生産を継続しながら、天井内に新規配管を敷設し、精製水製造/供給装置の調整と水質のバリデートが完了した時点で、既存配管からの切り替えを行うことを提案した。それでも、新規配管工事の際に、製造室内で立下げ配管施工が必要となり、一定期間の生産停止が発生することも説明した。

機械室(精製水製造室、ファン室)の一般エリア化

機械室(精製水製造室、ファン室)が製造エリア内に混在した状態となっていた。精製水製造室やファン室は定期的な清掃、フィルターの交換、消耗パーツの交換、注油などの作業が必要であり、クリーン服を着用した状態でメンテナンス作業をするには、作業性が悪く、安全上問題があることはもちろん無用に製造エリアに塵埃を持ち込む原因となる。

建屋増築(2項:中間保管室確保)と併せて、機械室を移設し、一般エリアからアクセスできるようにすることを推奨するが、当面の対策として、機械室への廊下の両端に前室および更衣室を設け、一般エリア化することにより、製造エリアとの相互の汚染を防止することを提案した。空調は、新規にパッケージエアコンと排気ファンを設け、当該エリアのみの個別発停制御する方針とした。

洗浄室から乾燥室、部品保管室へのワンウェイ化

洗浄済の器具等を乾燥室から取り出す際に、洗浄室を経由しなければ器具保管室に移動することができない。洗浄前の容器に付着した原料が飛散したり、容器の洗浄水が飛散したりする洗浄室に、洗浄・乾燥済の容器を持ち込むことは、再汚染の恐れがある。

洗浄室と器具保管室の間に間仕切り壁を設置し、乾燥室から器具保管室への扉を設置することで、器具洗浄-乾燥―保管のワンウェイ化とすることを提案した。

作業室から廊下への粉体同伴対策

作業室の出入口付近に、原料や製品の粉体を靴または台車で同伴したと思われる跡が見られた。交叉汚染防止のため、秤量・小分けなど、粉立ちの多い作業は、秤量ブース内や局所排気下で行い、塵埃をその発生源近傍で捕集することが第一である。秤量室はクリーンブース設置が最優先である。

台車の車輪を清拭したり、粘着マットで靴裏の粉体を除去するなど同伴対策が必要と考えた。工程室の出入口に前室を設けて、台車の載せ替え、靴の履き替えを行うことも効果的である。

精製水装置の更新

  1. 装置内配管の分岐部分のデッドレグが6Dを超えている。
  2. 装置内配管にネジ継手が使用されており、サニタリー性が低い。
  3. 水温計が現地表示のみであり、熱水殺菌時の温度および時間の記録を残せない。
  4. UF膜の分画分子量が30,000である。
  5. 供給水のTOC値をモニタリングできる計測器がない。
  6. 精製水タンク内に昇温用の電気ヒータが設置されているが、系内に6D以上のデッドレグが多数あり、精製水製造/供給装置内およびループ配管の全てを熱水殺菌できる構造になっていない。

上記全てを装置改造で対応するのは困難であり、費用対効果的にもメリットが少ない。耐熱RO膜+耐熱EDIモジュールによる精製水製造/供給装置への置き換えを推奨した。

ただし、装置サイズが既存より大きくなるため、既設機械室に収まらない。建屋増築時(2項:中間保管室確保)に新規精製水製造室を設けることを提案した。

GMP設備診断なら平原エンジニアリングサービス

お客様が、今使用している施設には、お客様の個性(特徴)がそれぞれにあります。そして、お客様に『求められる施設』は、取り扱う製品、製造数量、品目数などにより異なります。HESは、お客様の個性に寄り添い、継続的な医薬品生産のために『求められる施設』作りの第一歩を“GMP設備診断”でお手伝いします。