「こんなはずではなかった!!」 医薬品製造工場建設プロジェクトでの“あるある事例”の考察

医薬品製造工場の建設または改修の際に、「こんなはずではなかった!!」という、お客様の声をよく耳にします。
いったいどこに問題があるのでしょうか?

今回は、製剤棟の建設プロジェクトを想定して、
①コスト、②工期、③性能について、「こんなはずではなかった!!」事例と考えられる要因について、述べていきたいと思います。

コストで!①

 ●基本計画、基本設計を外部に委託したが、基本設計段階での概算が予算を大幅に超過した!!

当初の予算をどのように想定したのか?

以前に建設した製剤棟の建設費用を参考に、床面積当たりの建設コストを算出し、
新製剤棟の予想床面積に掛け合わせて算出した。
生産機器は、個別にベンダーより概算コストをヒアリングして決定した。

考えられる要因

  • 建設資材の物価上昇分の見込み違い
  • 建設作業員の人手不足による労務費上昇の見込み違い
  • 建設業界繁忙期の建設コスト上昇最新レギュレーションと過去のレギュレーションのギャップ
    (製薬用水設備、空調設備など)
  • 機器の見込み忘れ

基本計画・基本設計を委託した会社との連携に問題はなかったか?

考えられる要因

  • 詳細なユーザー要求(UR)をドキュメントとして提示していない。
  • ハンドリングの自動化レベルを提示していない。
  • 両社の思い込み、思い違い
  • 最新レギュレーションや封じ込めに対する認識不足

コストで! ②

プロジェクト進行中の管理が曖昧だったことから、このような例もありました。

●建設工事に着手し、竣工が近づいた頃、施工会社から多額の追加費用を要求された。

プロジェクトのコスト管理をどのように行っていたか?

考えられる要因

  • 追加・変更に伴うコストの増減を定期的に把握していなかった。
  • コスト管理の責任者を選任していなかった。
  • 各部門の要望を精査せずにプロジェクトに反映した。
  • 各設備間の調整ができていなかったため、手戻り工事や追加工事が発生した。

コストで! ③

発注者側の想いが、業者に伝わらず、こんなお話も聞きました。

●入札を行い、最も安い会社に発注したが、追加費用を要求され、結局、高い買い物となった。

入札時に提示した見積仕様書の内容は適切であったか?

考えられる要因

  • ユーザー要求(UR)、ユーザー要求仕様書(URS)に不明確な記述があり、
    受け取り方によってコストに開きがでた。
  • UR,URSに記載されていない項目があった。
    (例えば、物流の自動化レベルなど)
  • 発注者側の独自の社内規程や仕様の未提示であった。

入札メンバーの選定に問題はなかったか?

考えられる要因

  • コストを優先し、医薬品工場建設の実績の少ない業者を選定してしまった。
    →結果、医薬品工場に必要なシステム・思想になっていなかった。
  • 見積り落ちの項目が多数あった。

コストで! ④

自分たちの基準」≠「相手の基準」、思い込みが招いた事例もありました。

●工事がある程度進行した時期に、OQ項目や合格基準を確認すると
自社基準と大幅に異なり、発注者基準で実施するためには追加費用が必要となった。

IQOQ項目、その合格基準、測定方法、測定回数を提示していたか?

考えられる要因

  • 合格基準、測定方法、測定回数などを見積仕様書に未記載だったため、食い違いがあった。
  • 自社内基準の未提示だったため、合格基準、測定方法、測定回数に食い違いがあった。
  • 施工会社やベンダーの認識不足(特にCSV)

工期で! ①

後追いの「想い」が、工期・コストに影響した事例です。

●施工中に、変更や追加工事が多数発生し、当初の竣工予定から2か月遅れた。

基本計画、基本設計、実施設計の各ステージにおいて、図書内容の確認と各部門への周知を行っていたか?

考えられる要因

  • プロジェクトに関係する各部門の責任者が加わっていない。
  • プロジェクトの内容が周知されず、建設開始後、各部門から変更・追加要求が多数でてきた。

工期で! ②

「思い込み」と「確認不足」が影響した事例もありました。

●ベンダーや施工会社が作成したOQ計画書を確認すると、合格基準、測定回数、
測定方法などが自社の基準と異なり、OQ期間について、2か月間の工期延長を要求された。

IQOQ項目、その合格基準、測定方法、測定回数を指示していたか?

考えられる要因

  • 見積仕様書に未記載だった。
  • 自社基準を未提示であった。
  • 施工会社やベンダーの認識不足(特にCSV)
  • クオリフィケーション工程を管理する担当者の選任をしていなかった。
  • 工程を管理する責任者がいなかった。

工期で! ③

生産設備を正しく動かすために...情報の食い違いから起きた事例です。

●生産設備必要条件とユーティリティの供給条件に食い違いがあり、
試運転前に改造しなければならず、追加工事費を請求された。

生産機器仕様書(最新版)とユーティリティリストの照合を行っていたか?

考えられる要因

  • 生産機器仕様書の最新版と、ユーティリティリストの照合を行っていなかった。
  • 生産機器のユーティリティ条件を、仕様書が発行されるたびに確認し、
    関係各社へ伝達する担当者を選任していなかった。
  • 生産機器担当とユーティリティ設備担当のコミュニケーション不足

生産機器の同時使用率を考慮したユーティリティ供給量となっているか?

考えられる要因

  • 予想される機器の運転スケジュールの提示がされていなかった。

性能で! ①

相手の言葉を鵜呑みにしたことに起因した事例です。

●ベンダーで製作を始めてから、当初のユーザー要求仕様書に記載されている性能がでないとの報告があり、性能を満たすために追加費用を要求された。

要求する性能に対する技術力・経験を有するベンダーを選定したか?

考えられる要因

  • 発注先の調査やヒアリングを行っていなかった。

新製剤棟建設時に、コスト、工期、性能、品質を満足するためには何が必要なのでしょうか?
「こんなはずではなかった!」体験を減らすためにも、
“考えられる要因”ときちんと向き合いながらプロジェクトを遂行することが必要です。

最終更新日:2018年04月06日

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