5分で学ぶ温度マッピング:測定実務のリファレンスとは?

医薬品製造における温度マッピングとは

医薬品の製造においては、温度が製品の品質や安定性に非常に大きな影響を与えます。医薬品製造における温度マッピングは、製造環境や保管環境の平面的、立体的な温度分布を測定し、その妥当性を評価する手法です。

一般的に医薬品は決められた温度範囲内で製造され保管される必要があるため、周囲環境の温度管理は常に重要な要素です。温度マッピングによって、製造環境や保管環境のホットポイントやコールドポイントを特定し、必要な対策を講じることで、安定した品質の製品を生産することが可能となります。

医薬品製造におけるGDPと温度マッピングの関係

近年医薬品製造において、温度マッピングが重要視されるようになった背景には、GDP(Good Distribution Practice)と温度マッピングの密接な関連が挙げられます。

GDPは、医薬品の流通における品質管理の基準を定めた規制やガイドラインです。これは製造から販売までの医薬品の供給チェーン全体を対象としており、製造、保管、輸送、配送などの過程で品質を確保するための基本的な要件を規定しています。

温度マッピングは、GDPの一環として医薬品の適切な温度管理を確保するために行われる重要な手法です。医薬品は、決められた温度範囲内で保管および輸送される必要がありますが、その温度管理が適切でない場合、医薬品の品質や効果に悪影響を与える可能性があります。GMPに対する逸脱行為と同様に、もし温度マッピングの結果が基準に適合しない場合は、GDPに対する逸脱行為とみなされ、規制当局から是正措置や改善策が求められることになります。

温度マッピング関連規制

医薬品製造における温度マッピングを規定した関連規制のうち、以下に代表的なものを挙げます。

厚生労働省「医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインについて」2018年12月28日厚生労働省 事務連絡:このガイドラインでは、温度マッピングの実施について規定しています。保管場所の使用前に温度マッピングを実施すること、温度モニタリング機器を適切に配置すること、環境の制御又はモニタリングに使用される機器は定められた間隔で校正すること、保管条件からの逸脱が発生した際に警告を発する適切な警報システムを備えること、などの記述があります。

WHO Technical Report Series, No. 961, Annex 9: Model Guidance for the Storage and Transport of Time- and Temperature-Sensitive Pharmaceutical Products:このガイドラインは、時間と温度に敏感な医薬品の保管と輸送に関する一般的な手法を提供しています。その中でもSupplement 8 Temperature mapping of storage areas には温度マッピングの実施に関して詳細な記述がされており、特に具体的な数値と図をもって解説されたデータロガー/温度センサー配置の指針は、現在の温度マッピングの実務においてリファレンスと言える文献となっています。

ISPE Controlled Temperature Chamber Mapping and Monitoring:このガイドラインでは、医薬品製造における温度管理が必要な部屋(倉庫、冷蔵庫、冷凍庫)の温度マッピングとモニタリングの手法を紹介しています。

温度マッピングの計画と実施

温度マッピングと一口に言っても、やみくもに温度センサーを設置して温度分布を測定すればいいというものではありません。以下のように順を追ってその検証方法を実施する必要があります。

目的と範囲の確定: 温度マッピングの目的と対象を明確に定義します。例えば、施設全体なのか、特定の製造装置なのか、保管室や貯蔵室なのかなど、どの領域を対象として温度マッピングを実施するかを決定します。

温度センサーの配置:温度マッピングに使用する測定センサーの数量や配置を定めた明確なルールは省令などで明確に規定されているわけではありません。しかし前述のWHO、ISPEなどにガイダンスとして目安となる数値が記載されており、意思決定のための参考にすることができます。

温度データの収集:温度センサーを使用して、事前に設定された時間間隔で温度データを収集します。センサーのデータは、温度計やデータロガーなどの測定装置に接続され、データの取得と記録が行われます。温度データをどれぐらいの期間収集するかは、計画段階で十分な検討が必要です。

ホットポイントとコールドポイントの特定:収集した温度データを分析し、温度の異常な変動や偏りがある場所を特定します。ホットポイント(最も高い温度)やコールドポイント(最も低い温度)の特定は、製造保管環境において医薬品の品質や安全性にや悪影響を与えるエリアが存在するか否かを把握する上で特に重要な項目です。

レポートの作成と評価:温度マッピングの結果をまとめたレポートを作成します。レポートには、測定結果の概要、ホットポイントやコールドポイントの位置、温度の範囲や変動の評価などが含まれます。結果は規制要件や製造者の品質管理基準に基づいて評価されます。

必要な対策と改善:作成された レポートをもとに、必要な対策や改善策を立案します。例えば、温度の均一性を改善するための環境調整や装置の修正、温度監視システムのアップグレードなどが含まれます。これらの対策は、品質管理と品質保証の要件に従って実施されます。

逸脱時の対応

医薬品製造における温度マッピングで、測定データが管理基準を逸脱していた場合は、以下のような処置が必要となります。

原因の特定と解析:まず、測定データが基準を逸脱した原因を特定し、詳細な解析を行います。温度マッピングにおける異常は、施設の設備や環境、温度監視システムの不具合、作業手順の問題などさまざまな要因による可能性があります。どのような要因で逸脱が発生したか問題の根本原因を特定することが重要です。しかし時には潜在的な要因が表面化しない場合があり、その判断にはある程度の技術と知識が要求されます。

是正措置の実施: 特定された原因に基づいて、是正措置を実施します。これには、設備の修理や調整、環境の調整、作業手順の見直しなどが含まれ、温度マッピングの基準を満たすように問題を解決します。場合によって大幅な設備の入れ替えや施設の改修を伴うことがあります。

再マッピングの実施:是正措置が実施された後、再度温度マッピングを実施します。問題が解決されているかどうかを確認し、基準を満たしていることを確認します。

レポートと記録の更新:温度マッピングの結果や是正措置、再マッピングの結果などをまとめたレポートを作成し、記録を更新します。これにより、問題の特定と解決手段、品質保証措置の実施などが文書化されます。また、将来の参照や監査のために、詳細な記録の保存が特に重要です。

リスク評価と品質影響の評価: 温度マッピングの逸脱が医薬品の品質や安全性に与える影響を評価し、リスクを評価します。必要に応じて、追加の対策や既に生産された、または出荷された製品の取り扱いについて再評価などが行われる場合があります。

温度マッピングの逸脱処理は、製造企業の品質管理システムおよび規制要件に基づいて行われ、迅速かつ適切に対処することが求められます。平原エンジニアリングサービスでは、お客様のさまざまな状況にあわせて最適な進め方をご提案させていただいております。また、問題の予防に向けた改善策の導入や、品質管理プロセスの見直しなど、各々のお客様にとってベストな進め方を検討させて頂きますので、お困りの際は弊社までお気軽にお問い合わせください。

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