頭文字がGMP!20世紀の大ピアニスト

今回は、20世紀の大ピアニストをGMPつながりで揃えてみました。
たまにはターンテーブルのスイッチを入れて、レコードの音に耳を傾けてみませんか?

 

Gould:グレン・グールド (1932 – 1982) カナダ生まれ

彼の代表作と言えば、やはり2枚のゴルドベルク変奏曲であろう。
冒頭のアリアと結末のアリアの間に、30曲のバリエーションを挟み、大きなシンメトリー構造を持つ、大変技巧的な難曲である。
グールドはこの曲を生涯に2度録音を行っている。
デビュー直後の20代、そして50歳で急逝する直前である。
 カナダCBCテレビのドキュメント番組で、2度目の録音の収録風景が残されているが、まさに音楽に打ち込む求道者のような鬼気迫る演奏である。 風にそよぐレースのようなレガート、ヒバリのさえずりの如き超高速トリル、雪原に足跡を残すかのようなノンレガート奏法、モネの絵画のように陰影を織りなすポリフォニー、何度見ても飽きることがない。
没年の1982年から40年近い歳月が流れた現在でも、バッハを弾く者には少なからずグールドの呪縛がつきまとう。
「グールドのように弾きたい」、いや「グールドのようには弾きたくない」いずれにしてもグールド、である。
人類の音楽の歴史が続く限り、この呪縛から逃れられないであろう。
私は・・・さて、どちらでしょうか?

Michelangeli:アウトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1920 – 1995) イタリア生まれ

異常なまでの完璧主義者として知られたピアニストである。
「グールドの精神的同僚」と自ら語ったと言われるほど、身体的・精神的コンディションの浮き沈みが激しく、突然ステージをキャンセルすることも数多くあった。
しかし卓越したテクニックの持ち主で、多彩なタッチと微妙なペダルコントロールで、幅広い音色を操ることができた。ミリ単位で操作されるソフトペダルと、ダンパーペダルにより、ハンマーの角で弦を擦り、特殊な音色を生み出したと伝えられる。
その多彩な音色は、近代フランス音楽において存分に発揮され、ドビュッシーの作品の素晴らしい録音で触れることができる。
たまたま帰省した折に、父親のレコード棚にミケランジェリのライブ盤が収められているのを見つけた。
おそらく自分が子供の頃から、数十年間ここにあったはずのレコード。
父はあまり好きではなかったのか、家で流れていた記憶は全くない。
ブゾーニ編曲バッハ パルティータ第二番シャコンヌ、
ドビュッシー 映像第一集 水の反映。
針を落とした瞬間に溢れ出る、水面の煌めきのような音の洪水。
もう何も言葉はない。
またあのレコードを聞きに帰ろう。

Pollini:マウリツィオ・ポリーニ(1942- ) イタリア生まれ

もう生き神様のようなピアニストであり、ショパン弾きとして彼の右に出るものはない。
ショパンのエチュード集、ポロネーズ集は、録音から40余年が経った今でも、ショパンピアノ曲の名盤として燦然と輝く金字塔である。
ショパンエチュードを学習し始めたころ、家にあったこのレコードを聴き、自分で弾いているのと同じ曲か?と腰を抜かしたものである。
冷徹なまでに設計された構成、超高速テンポにも破綻することのないテクニック、まさにヴィルトゥオーソという言葉は彼のためにあるかのようなものである。
しかし同じ世代のアシュケナージが指揮に、アルゲリッチが室内楽に注力している現在、ソロピアノで一夜の公演を請けられるのはポリーニだけになってしまった。
ポリーニ自身も寄る年波には勝てず、演奏に陰りがみられると聞く。本当の神様になるのはまだまだ早い。元気な姿を来年も我々の前に見せてほしい。

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